TSJ公式LINE ID連携をしてお得に旅行を楽しもう 特典はこちら

ローマ皇帝が愛したカプリ島

Vol.945

イタリア 夫婦旅行記

イタリア夫婦2人旅行!ナポリ&ローマで行きたい場所すべて行けて大満足!

投稿者/旅行形態:
60代女性 / 夫婦旅行
滞在都市:
ナポリ、ローマ
旅行期間:
2024年11月6日~11月14日の9日間

SCHEDULEお客様のご旅行日程

1日目
成田発~
【宿泊】機内
2日目
ドバイ経由~ナポリ着(エミレーツ航空)
ナポリ観光(トレド駅、ナポリ国立考古学博物館)
【宿泊】ナポリ
3日目
カプリ島観光(ヴィラヨヴィス)
【宿泊】ナポリ
4日目
ナポリ観光(カゼルタ宮殿)
【宿泊】ナポリ
5日目
ナポリ発~ローマ着(FRECCIA ROSSA)
ローマ観光(オスティアアンティカ、サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会、モーゼの噴水、ディオクレティアヌスの浴場)
【宿泊】ローマ
6日目
ローマ観光(ヴァチカン市国、真実の口、フォロロマーノ)
【宿泊】ローマ
7日目
チボリ観光(ヴィラアドリアーナ、ヴィラデステ)
ローマ観光(サンタマリアマッジョーレ教会、サンタプラッセーデ教会、サンタプデンツィアーナ教会、サンタンドレアアルクイリナーレ教会、サンタンドレアデッレフラッテ教会、サンタマリアデルポポロ教会)
【宿泊】ローマ
8日目
ローマ観光(ボルゲーゼ美術館、サンタマリアデッラヴィットーリ教会、ボルゲーゼ公園、ヴィッラジュリアエトルスコ博物館、サンタマリアデルポポロ教会、パンテオン、サンタマリアソプラミネルヴァ教会)
ローマ発~
【宿泊】機内
9日目
ドバイ経由~羽田着(エミレーツ航空)

ナポリ、ローマ(イタリア)旅行体験記・レビュー『イタリア夫婦2人旅行!ナポリ&ローマで行きたい場所すべて行けて大満足!』。【トラベル・スタンダード・ジャパン】をご利用されたお客様によるクチコミ・評判をご紹介します。当社では自由にツアーアレンジが可能、オリジナルのイタリア周遊旅行をお楽しみいただけます。

今回の旅行の目的

7月に満席といわれていた他社ツアー(ローマのみ8日間)でしたが、10月はじめにドタキャンが相次いだということで、急遽催行中止になりました。アッピア街道、ネロの宮殿など通常ツアーでは行かない魅力的な場所や、個人だと足の便が悪い所が含まれていただけに残念でした。

自由行動日に行こうと思い、すでにヴァチカンとボルゲーゼ美術館のチケット(円高で決して安くない)をネットで予約してしまっていたので、はじめての旅行会社でしたが御社に相談したところ、平井さんが残席2席しかなかったエミレーツ便を手際よくおさえてくださいました。

そんな事情で、目的のひとつはローマツアーに含まれていたオスティアアンティカ、ヴィラアドリアーナ、ヴィラデステなど郊外へも、がんばって自力で行くこと。ふたつ目は主人がローマははじめてだったので、ローマ観光王道のヴァチカン、コロッセオ、フォロロマーノ、スペイン広場、真実の口などへ連れていくこと。

3つ目は、30年くらい前に友人とイタリアを1ヵ月かけてまわったのですが、「ミケランジェロ命」の友人だったので、ルネサンスに関係のない場所はバッサリ予定から外され、拝み倒してモザイクのあるヴェネツィアとラベンナへ行ったものの、わたしにとっては物足りず、心残り旅のリベンジです。

5度目のイタリア。今回は古代遺跡、モザイク画、庭園、噴水、教会、そしてなによりベルニーニ詣でが十分できて大満足。日に20~30km歩いて、主人から「これは観光旅行じゃない。軍事演習だ」と揶揄されましたが。3日と半日のローマでよくぞこれだけまわったと、我ながら感心しています。

以前からナポリ考古学博物館へ行きたかったので、ナポリも加えることにしました。わたしの旅は、事前によく資料を読み込んで、目的をはっきりさせること。そうすれば格段に旅行の質があがります。

1~2日目 成田深夜発ドバイ着→2時間後出発のナポリ便へ乗り換え ナポリに到着後、ホテルへ→地下鉄トレド駅見学→ナポリ国立考古学博物館

成田を深夜便で出発し、定刻どおりにドバイ到着。朝5時というのに、すでに外気は30度を超えていて、秋の装いの私たちにはかなり暑い。ドバイで乗り継ぎに失敗する人がいると事前に聞いていたので、緊張しながら出発情報の電子掲示板を探しました。ゲート確認後、ものすごくわかりやすい「コネクションこっち」の表示のとおり先に進むと、大きいエレベーターに行き当たり、これで降りると空港内電車がいます。電車に乗って次の駅で下車、そこからはひたすらゲートまで歩きます。持ち時間2時間で余裕でした。

成田-ドバイ便のCAさんから「到着直前にコネクション情報が表示されるので、注意してよく見ておくといいわよ」と教えてもらいましたが、ナポリ便はエミレーツ子会社の便だったため、必死で見ていたにも関わらず、結局表示されませんでした。

子会社便はLCCだったようで、映画は有料でした。CAはすべて男性でちょっと珍しい。5時間近く乗るので、食事もでないのかなあとぼんやり考えていたら、簡単なサンドイッチを配ってくれました。

11時頃にナポリ着。空港から出てアリブス(中央駅までのバス)に乗ろうと歩いていたら、おじさんに荷物を取り上げられてバンに放りこまれました。値段はバスと一緒なんだしすぐ出発するからと、強引に乗車させられるはめに。運転手は常時携帯電話で会話して、運転は恐ろしいほど荒っぽく、途中から片手どころか両手を離してぶっとばすなんてありえない・・・生きた心地がしませんでした。

ホテルヌオーヴォレベッキーノではすぐチェックインさせてもらえ、荷物をおいてお昼ご飯へ。ナポリのホテルは清潔で快適でした。特に朝食がおいしくて、毎日楽しみでした。クロワッサンは焼き立て。スタッフも陽気で親切で、フロントのおじさんにカップラーメンをおすそわけしたら、「大好きなんだ!」と、ラーメンを抱きしめて喜んでくれました。

ホテルへ向かう時に道を教えてくれた女の子がいるナポリ駅すぐの「アラディン」というお店へ。普通のピッツアだけでなく揚げピッツアなるカレーパンに似たもの(中身がチーズやポテト、トマトなど)も美味でした。彼女にお礼を言って、その後、地下鉄駅ガリバルディへ。

ナポリの地下鉄は2種類あって、ひとつはメトロといわれるもの。もうひとつは普通の鉄道がやっている地下鉄で、切符も行先も違うので間違わないよう要注意。イタリアでは発券機で切符購入すると、代金だけ取られて切符がでてこないという痛い目に何度もあっているので、有人切符売り場で地下鉄チケットをまとめて購入(おつりがでないケースも普通らしい)。

念のため明日乗船するカプリ行きの港へ寄ってみる。豪華客船のお客さんをさばいていたおじさんが「チケット売り場は、あの青い建物だよ」と教えてくれたので行ってみたが、なんと廃墟。しかたなく歩き回っていると、ぴっかぴかの建物を見つけ、ここが新乗船チケット売り場と判明。ただ、翌日ここで泣きを見ることになりますが、このときは想像もできず。

ここからヌオーヴォ王宮の脇を通って、メトロのトレド駅へ。「世界で一番美しい駅舎」という本を持っていて、その表紙を飾るうっとりするほど美しい満点の星空のような天井を持つメトロ駅。ただ、実際に見るとプロが撮影した写真の方がどう見てもきれいで・・・まあ、それでも日本にない素敵な天井なので、機会があれば実物を見てみることをおすすめします。

世界一美しい地下鉄トレド

世界一美しい地下鉄トレド

トレド駅のすぐそばには有名なスペイン地区があり、ひしめく建物に狭い路地、そしてお約束の洗濯ものがはためく風景が、ナポリに来たんだなあという気分にさせてくれます。ただ、ひったくりやスリもたくさんいる場所なので危ない。遠くから眺めるに留めました。

トレド駅からメトロに乗ってナポリ国立考古学博物館へ。駅を出てすぐ博物館があるので迷うことはありません。広い館内に古代ローマの彫刻、ポンペイなど古代遺跡から発掘されたモザイクや壁画などが、これでもかというほど展示されていて、しかもレベルが非常に高い。

②ナポリ国立考古学博物館「ファルネーゼの雄牛」

ナポリ国立考古学博物館「ファルネーゼの雄牛」

ここへ来たかったのは、アレキサンダー大王の「イッソスの戦い」がどうしても見たくて、当初ツアーに参加予定だったときも、日帰り弾丸ナポリ遠征をもくろんでいたくらいです。ところが、わくわくしながらモザイク展示エリアへ行ったところ、「現在修復中」の悲しいお知らせが。2000年前の古いモザイクだから、たしかに大修復は必要なんでしょう。

博物館に入ってすぐダウンしてしまった主人をひろって館内を再度足早やに回り作品解説。その後は館内にある喫茶店へ。「クリームマキアート」を注文すると、小カップはかなりちいさいといわれ、大カップを依頼。ところが出てきたのは飲み物ではなく、珈琲ソフトクリーム。一口食べたらなんと、とてもおいしい!珈琲特有の苦味がある大人の味でした。

3日目 カプリ島へ

しょっちゅう起こる交通機関のトラブルは、「イタリアだもんね~」と主人と半ばあきらめ気味に受け入ていました。それでも心配なので、毎日ニュースを見てストライキチェックはしていたのですが、前日の夜のニュースでショーペロのテロップが出てきたので、明日はストライキかとがっかり。

それでも、少しは電車が動いていることもあるので、とりあえずかなり早めにホテルを出て、メトロ駅のガリバルディ駅へ行ってみる。運よく改札があいていたので、ホームで電車をしばらく待ち乗車。よかったねえと主人と話していたら、なんだか様子がおかしい。各駅停車のはずのメトロが、猛スピード、ノンストップで狂ったように走り続けるので、さすがにまわりの観光客もざわつき始めました。

隣席のイタリア人の女の子に尋ねてはじめてナポリのメトロはショーペロ (ストライキ)の日は、10数駅すっとばし運転をすることを知りました。到着したのはガイドブックにも乗っていない郊外の駅で、しかたなく折り返しのガリバルディ駅に戻る電車を30分以上待つはめに。

フラフラになりながら、前日訪れたカプリ行きの船が出ている乗船場へやっとたどり着き、出発5分前に切符を購入。ここでも係員は携帯電話でおしゃべりに夢中で、切符販売はついでにやっている感じ。目もあわせてくれないので、船がどこから出るのか確認することができず、仕方なく目の前の列に並ぶ。乗船場はいくつかガラスの扉がありますが、全て閉じられていて、行先を表示したプレートも全くなく、他の扉前には人も並んでいないし、係員もいない。その上、日本ではあたりまえの乗船アナウンスすらなし。船がすぐ来たので乗ろうとしたら、ソレント行きといわれて呆然。カプリ行きの船はあれだよと、出港したばかりの船を指さされる。メトロ騒動で疲れ切っていて、乗り場の確認をしなかった私たちが悪いのですが、ここで2時間もロスすることに。

季節的に波が荒いと思っていたので、「青の洞窟」は最初からプランよりはずしていました(前回見ているし)。ストライキ+2時間もロスしたことで、当初予定していたサンミケーレ教会とヴィラサンミケーレもあきらめ、ヴィラヨヴィスに絞って観光することに。

ローマ皇帝が愛したカプリ島

ローマ皇帝が愛したカプリ島

歩いているのもほとんど別荘の人らしく、すれ違う度に挨拶してくれるし、別荘の合間に青く美しい海が右や左に見えてくる。ヴィラヨヴィス近くでは、のどかにヤギ数頭が草をはみ、風がそよぎブーゲンビリアの花が咲き誇っている。なんていいところ!楽園!!と感動。

古代ローマ初代皇帝アウグストゥス(カエサルの後継者)が、当初持っていた温泉もあるお隣のイスキア島を手放してカプリ島を手に入れ、その次の皇帝ティベリウスもカプリ島が気に入ってしまい、皇帝なのにローマを離れ長期間カプリ島から今でいうリモート統治をおこなっていたのです。インターネットも電話もなし、そのうえ交通機関も発達していなかった当時、ローマからの使者はローマとカプリ島を往復するだけでも大変だったろうと同情。

ヴィラヨヴィスはその別荘(宮殿)跡で、その大きさに驚かされます。なかでも水が貴重だったのでしょう。貯水槽が中心を占めています。浴場も大きく立派なものだったことが想像され、なにより断崖絶壁につくられた別荘からの眺めが壮観です。目の前にはソレント、青く澄んだ海、そして夜には満点の星空が楽しめたことでしょう。かの「青の洞窟」は皇帝専用のプールだったとか。

天国のような場所から離れるのは名残惜しい思いつつ、帰りの船の時間もあるので下山して港へ。船待ちの時間、海沿いのカフェでモッツァレラチーズ、トマト、生ハム、ハーブをパンではさんだものを遅いランチとしました。これぞイタリアという味で、絶品!リモンチェッロ(甘いレモン酒)もお味見させてもらって、カプリ島を後にしました。船の窓からは遠くにポンペイを滅ぼしたヴェスヴィオ火山が。

夕食は前日に中央駅でみつけたスーパーマーケットのお惣菜売り場で、チーズとトマトに緑の野菜サラダ、きのこいっぱいのサラダ、ばかでかいフォカッチャ(すごくおいしい)などを買ってホテルへ。ここのお惣菜がおいしくて、結局ナポリ滞在中の3日間、夕食確保のため通い続けました。

4日目 カゼルタ宮殿へ

前日にカゼルタ行きの往復切符を購入済みだったので、駅の改札を通過。その際、駅員さんにカゼルタ行きのプラットホームを教えてもらい、すでに電車が到着していたので乗ろうとボタンを押したが開かない(イタリアの電車は乗る時も降りるときも、扉のボタンを押して開ける)。

プラットホームの行先掲示板もこのホームがカゼルタ行きになっているし、発車時間が迫ってきて焦っていると、改札のほうからやってきたおばさんが「あんたたち、ここじゃないわよ。私についてらっしゃい」と、どんどん前へ歩いていくのです。5両分くらい進んだところで、なんと電車間の連結が外れていることに気がつき、前方の電車だけがカゼルタへ行くことがわかり、おばさんにお礼を言いました。

無事、9時半ごろカゼルタ駅に到着。とにかく広い宮殿なので早く閉まる庭園からまわろうと、チケットを購入してすぐに3km先の庭園の一番奥まで行くミニバスに乗車しました。庭園の真ん中に運河のような水の流れがあり、要所要所に物語がある彫刻と噴水が置かれています。一番奥が有名な「ディアーナとアクタイオンの噴 水 」。女 神の水浴を見てしまったアクタイオンが鹿に変えられ、自分の連れてきた猟犬に食い殺されるという、なんともかわいそうな話です。

カゼルタ宮殿の庭園

カゼルタ宮殿の庭園

マリーアントワネットと仲がよかったお姉さんがここに嫁いでいて、彼女のたっての願いで作 られたのがイギリス庭園 。噴水すぐ横の入口から庭園内へはいったのはいいのですが、まったく地図がなく、「ヴィーナスの池 」へ行きたいのに、どこにあるのか皆目わからない。ちょうど通りがかったおじさんに声をかけると、イタリア語 で丁寧に説明してくれたが、話が込み入っていてよくわからない(そこまで私にイタリア語力がない)。困った顔をしていたら「連れて行ってあげよう」と。おじさんは近所で暮らしていて、この美しい庭園が大好き。年間パスを購入して、時間があると散歩に来ているのだと話してくれました。

到着した場所はこの世とは隔絶した美しさで声がでない。連れてきてもらってよかった!すぐそばに模造のローマ廃墟 があり、本物の古代ローマ彫刻が数体飾られている。イギリス庭園でローマ廃墟というのも変な感じですが、しっくり溶け込んでいました。この頃の欧州では古 代 イタリアブームが続いていて、貴族たちが廃墟に憧れていたらしい。

おじさんにはよくお礼をいってここで別れ、さらにゆっくり庭園内をまわりました。結局、ひとつずつ丁寧に噴水を見て回り、さらに運河から離れて奥の庭園をさまよったので、4時間以上歩き回りました。さすがに疲れて、宮殿内のカフェでカプチーノとピザを食べて休息し、いざ宮殿見学へ。

1200室もある宮殿は、ヴェルサイユ宮殿よりも大きく、公開されている部屋だけでもざっと見てまわるのに2時間ちかくかかる。どこもかしこも豪華絢爛すぎて、頭はくらくら、目がチカチカしてくるほど。宮殿は申し分なく立派ですが、わたしはやっぱり緑豊かな庭園の方が好きです。

1日がかりの見学をようやく終えて駅へ戻ると、乗るはずの電車がキャンセル(運行中止)と表示されていました。切符を購入する際、指定席でもないのに乗車時間を指定しないと購入できない仕組みなのに、切符にはその指定した時間が記入されていないのは変だなと思っていました。最後にテルミニ駅から空港への電車も同様の購入方法で、やはり切符に時間表示がなく、結局電車は運行中止。そういえば駅の電光掲示板を見ているとキャンセル表示されている電車、結構ありました。

勝手な想像ですが、これは労働者ファースト、利用者は置いてきぼりのイタリアにおいて、おそらく切符の事前購入時におおよその乗車人数を把握し、乗る人が少ないと判断すれば運行中止にしているのかも。あくまで「電車が走っていたらラッキーな時刻表で、キャンセルだったらごめんね~」なのかもしれません。イタリア人は、よく我慢していますね。イタリア労働者諸君、もっと働きなさい!

5日目 午前中、ナポリ中央駅→テルミニ駅移動、午後はオスティアアンティカへ→ローマへ戻って「サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会」、モーゼの噴水、ディオクレティアヌスの浴場(外観)を見学

11月は年間で1番雨が多いと聞いていたのに、ありがたいことにずっと晴れ。「晴れ男」の旦那様のおかげだと思います。ナポリからローマへの電車移動はなにごともなく、ここまで交通機関に足を引っ張られてばかりだっただけに、ほっと一息。でも、このあとも「悪夢の交通受難」は続くのですが。

ローマのホテルは現地で急遽変更になりました。もともと「リミニで確定」ということで平井さんから出発前にバウチャーをいただいていました。変更先のホテルは、「アルキメデ」という名前で、リミニからは2筋先を右にまがってすぐだったと思います。 リミニのフロントへ行くと、西洋人のご婦人が私たちのすぐあとにやって来て、フロントのおじさんが私たちとそのご婦人2人を伴って、なんの説明もなくアルキメデに連れて行きました。ホテルでたまたま会った日本人カップルも、僕たちもリミニからここへ連れてこられたと言っていました。おそらくリミニはオーバーブッキングでも予約の受付をして、 周辺の空きがあるホテルへお客を割り振っているのではないかと思います。 建物が古い以外はバスタブもついてまあまあのお部屋でした。バス用の足ふきタオルはお願いしないと用意してくれませんでしたが。4つ星でしたがフロントの女性がいつもテイクアウトのパスタやパンをカウンターで食べながら接客していたので、本当にここ4つ星なの?と、他の日本人といぶかりました。 これまで数知れずホテルを利用してきましたが、こんな失礼なフロントははじめてです。

気を取り直してオスティアアンティカへ。ところがここで問題発生。ローマパスなどは元がとれそうにないのでやめて、地下鉄一回券をたくさん購入したいのに、日曜日のためか購入できる店があいていない。しかたなく地下鉄の券売機で買おうとすると、チャージカードしか売っていない。しかも販売機を眺めているだけではなんのことかわからず、並んでいた人に聞いてはじめてわかった話です。事前に日本でメトロ切符購入の件はさんざん調べたのに、駅ではチャージカードのみ販売なんて、どこにも書いてなかったです。

やっとカードを購入してメトロへ。事前にオスティアアンティカへ行くのよと話していた親切な若い男の子が「降りる駅、ここです。階段をあがって左手すぐに乗り換える電車がいます」と教えてくれる。乗り換えた電車内では、楽しそうに踊っている男の人や、ぼろぼろの毛布を着てずっと怒っているおじさん、「さあ、神に祈りましょう」と布教中?の人など、変った人だらけでおかしな光景でした。

オスティアアンティカ駅に到着して、どこへ行けばいいかわからなかったが、とりあえず人についていくと入口につきました。おお、想像していた以上に広そうだ!見渡す限り、古代遺跡。すごいところに来たなあ、とまだ入口なのに感動。ポンペイのように悲惨な亡くなり方をした人を展示しているのではなく、テヴェレ川の土砂がたまって港が使えなくなり、衰退してしまった古代都市なので悲壮感がない。こんなすごい都市が2000年前に存在したなんて、やはり古代ローマは侮れません。

いくつもの神殿、消防士の宿舎、にぎやかだったであろう商店街、商品の集積地だっただけにたくさんの倉庫もあり、大きな浴場、その横に公衆トイレなどが、だだっぴろい敷地によい状態で残っています。お昼ご飯は、古代円形劇場の客席で食べました。とても贅沢なことですよね。ここのすごいのは、ぐるぐる歩いていると、モザイクの大きな床があちこちに現れること。女神だったり、ライオンだったり、イルカだったり・・・モザイクをひたすら探して回るのも、楽しそうです。

オスティアアンティカのモザイク

オスティアアンティカのモザイク

おもしろかったのは居酒屋さん。メニューの絵が今も壁に残り、料理をつくっていたであろうキッチンや大理石のカウンターもあります。遺跡の保存状態がとてもいいので、古代ローマ人に仮装してこの町を練り歩くイベントとかあったら、きっと楽しいと思います。わたしも、絶対参加したい!

夕暮れまでとことん歩き回り、もう限界という顔の主人と電車に乗ってローマ市内へ戻る。ここでホテルに帰ったらもったいないので、まだ開いていそうなベルニーニの彫刻がある「サンタ・マリア・デッラ・ヴィットリア教会」へ。薄暗い中、ずっと見たかった「聖女テレーザの法悦」をやっと見ることができました。今にも動き出しそうで、それでいてなんとも神々しいのです。美しかったなあ。

聖女テレーザの法悦

聖女テレーザの法悦

感動でぼーっとなりながら教会を出て、目の前の大きな「モーゼの噴水」と、反対側の「スザンナ教会」(外観)や近所のサンタマリアデッリアンジェリ教会(外観)を見て、本日最後の見学先の「ディオクレティアヌスの浴場」(外観)へ。もう外は真っ暗だったので浴場も黒い塊でしたが、見られただけでもよかった。現在は博物館として公開しています(時間切れで内部見学はできなかった)。

ホテルへ戻る前に、テルミニ駅地下にあるスーパーマーケットへ。お惣菜コーナーが充実していて、お寿司のパックも売っています。店内では日本語も聞こえてきて、観光客が多い感じでした。30年前のイタリアは、円高でリラが弱かったので、毎食外食でもたいした金額にはなりませんでしたが、この円安ではパスタ、ピザ、レタスとトマトのサラダ、ミネラルウオーター(500ml)1本頼むと、カフェに近いようなレストランでも1万円。とてもじゃないですが、外食三昧する気分になれませんでした。

6日目 午前中、ヴァチカン市国へ→午後は真実の口やフォロロマーノなど→夕方から夜はローマ市内を散策(というか、ほとんど行軍)、最後にカフェグレコへ行き、ホテルへ

ヴァチカンは昔と違ってかなり混雑すると聞いていたので、8時頃にサンピエトロ寺院へ到着できるようにホテルを出ました。朝早かったためか並ばずにはいることができ、人も多くなくピエタはじめ内部をゆっくり見学することができました。サンピエトロ広場、内部の天蓋バルダッキーノ、そしてベルニーニの「聖ロンジーノ」ほか、バロックらしい力強く勢いのある4体の彫刻がすばらしかったです。

9時半にヴァチカン美術館を予約していたので、サンピエトロ寺院を出て来た道を戻り、美術館入口をめざす。すごい行列ができていて、警官まで出て誘導をしていた。予約票を見せると、こっちまで進んでいいよと、すぐに建物内へ入れるところまで行ける。内部も人まみれで、とりあえずトイレに行っておこうと思ったら、ここも長蛇の列。1日いったいどのくらいの人が、ここを訪れるのだろう。

館内は眼が眩むほど広く(前回は、3日間通う羽目に)いろいろな言語が飛び交う中(ほとんどが団体さん)、人をかきわけながら自分の見たいエリアをさがす。ラファエロやジョット、きれいになったシスティーナ礼拝堂の「最後の審判」(以前は修復中)。ローマンカトリック総本山のとても神聖な礼拝堂の壁画が地獄って(一応天国も描かれていますが目立たない)。もしかしたらミケランジェロは、免罪符を乱発しまくり、神に仕える身でありながら愛人子供がいてあたりまえなど、腐敗しきっていた当時の教皇や枢機卿に対して、強烈な皮肉をこめて描いたんじゃないかと勘ぐってしまいます。

ラオコーンを見ていなかったので、元来た道を戻りながら結構長い距離を歩いてようやく対面。やっぱりすごい迫力。ミケランジェロが発掘直後に見学に来て興奮したという気持ち、よくわかります。優美な彫刻が周囲にたくさんありましたが、時間切れで涙を呑んで出口へ。

その後、メトロに乗ってチルコマッシモへ。ここで追剥にやられたという手記もありましたが、この日は学校の遠足らしい一団もいて、のどかな雰囲気。映画「ベンハー」に出てくる戦車競技を実際に行っていた場所です。ここで持参したランチを食べて、近くにある真実の口へも足を運び、写真撮影。有名観光地なので行列ができていました。目の前にはローマでも特に古いといわれているヴェスタの神殿やフォルトゥーナの神殿をすこし遠目にみながら、次の目的地へ。

見たかった「亀の噴水」が意外に近所にあることがわかったので、見に行くと修復中。かろうじて亀が歩いている様子は確認できました。途中、オクタヴィアの列柱(古代建築ですが、なんと一部が店舗として営業中。すごいぞローマ!)の前を歩き、すぐ横にあるスケール感がものすごいマルケルス劇場へ。内部には入れませんが、カエサルが企画した劇場が目の前に堂々と建っているって、夢のようです。保存状態も悪くなく、手を入れれば現役復帰できそうな感じでした。

ここから坂道を上がるとヴェネツィア広場に出る。「入れ歯」と口の悪いローマっ子にからかわれたヴィットリオエマニュエーレ 2世記念堂はバカでかく、周囲の古代遺跡の景観を明らかに損なっていると思う。いよいよフォーリインペリアーリの前を通ってフォロロマーノへ。遠方にコロッセオが見えます。さすがにこの時間だと、チケット売り場に誰も並んでいない。今日の前半欲張りすぎたので、この時点でフォロロマーノに滞在できる時間がたったの約1時間。11月は冬時間のため、閉館時間が早いのです。あんなにいろいろ調べてきたのに、時間不足となり大急ぎで内部を歩く。

今回の目的、カエサルの火葬の場を確認することができました。特別な場所だということでしょうか。ここだけ屋根がかけられています。内部にはいくつかお花も供えられていました。無念の死を遂げたカエサルですが、彼が後継者として指名したアウグストゥスは、カエサルの期待に応えるようにパクスロマーナといわれる平和で豊かな時代を築いています。カエサルの人を見る目は間違いなかったということですね。残念ながら、お隣のパラティーノの丘は時間切れであきらめました。

本来なら日も暮れかけていたので、ホテルへ帰る時間なのですが、見たいところが多いのでこのまま観光を続けることに。道を間違えたらしく、どこにいるのかわからなくなる中、親切な若い女の子がトレヴィの泉まで一緒に歩いてくれました。やっぱりここも人だらけ。その後、大統領官邸を横目でみながら、クイリナーレの丘を上り、日が沈む寸前の美しいローマの遠景を眺める。それから遺跡から持ってきて建物に嵌め込んだ「四つの噴水」、ちょっと怖いイルカとかわいい蜂がくっついている「トリトーネの噴水」を見て、メトロでポポロ広場に移動。

ポポロ広場は見てみたかった場所で、本当に道が放射状に3本通っていました。真ん中にどーんとエジプトから持ってきたオベリスクがそびえたっているのがローマらしい。そばに佇むサンタマリアデルポポロ教会へ寄ってみたが開いていない。ベルニーニの彫刻2体があるので、その後2日間通うが結局、扉が開いている日はありませんでした。すこし先にゲーテがローマ滞在中、住んでいた家も残っていて、公開しています。今度、イタリアに来るときにはゲーテの「イタリア紀行」を片手にまわるのも楽しいだろうなと考えています。

「もう歩き疲れたよ~」と、泣きそうな主人を励ましつつ、スペイン広場へ。ここでベルニーニ作「舟の噴水」を見る。彼にしては随分簡素なデザインで、なにか特別な理由でもあったのでしょうか。そういえばこの後、彼のお墓を訪れますが驚くほどシンプルでした。あれほどローマを華麗に装飾したベルニーニ、でも真の姿は意外にもとても素朴な人だったのかもしれません。

ここからすぐの最後の目的地「カフェグレコ」に入り、ようやく休憩することができました。ゲーテ、アンデルセン、ワーグナーも訪れたという 1760年創業のカフェで、現在も観光客でいっぱい。イタリアなのに店員が話しているのは英語。カフェマキアートを頼むと、驚くほど繊細な珈琲が運ばれてきました。今まで飲んだことがないようなコクがあるがやさしい味。2人で5000円という金額には正直ぎょっとしましたが、それでもお金にかえられない老舗らしい時代の深みを感じさせる特別な場所です。

カフェグレコのコーヒー

カフェグレコのコーヒー

7日目 終日チボリ(ヴィラアドリアーナとヴィラデステ)へ→ローマ到着後、主人をホテルに残し、私だけ夜のローマの町(教会メインの見学)へ

ローマ訪問の手記を書いている人たちが、「ヴィラアドリアーナへ行くのは大変」と口をそろえているので、ヴィラデステの前に、まずヴィラアドリアーナへ行ってみようとホテルを出る。メトロでポンテマンモーロ駅まで行き、駅のタバッキーでヴィラアドリアーナ行きのブルンマンバスチケットを購入、お店の人が「2階へ上がり、2番か3番のバスに乗りなさい」と教えてくれ、すでに2番に何人も人がいて、そこへ並び乗車(イタリアでは一応並んでも乗車時はどっと入口に人が押し寄せ意味がない)。乗り場の表示があったのはここまで。途中のバス停には「さくら1丁目」など、日本では当たり前のように書かれている停留所名なるものが、全くない。もっと困ったのは、「次は緑町~」といった車内のアナウンスもない。じゃあ、どうやって目的地で下車するの?とりあえず前方2番目の席に陣取り、運転手さんに3回も「ヴィラアドリアーナで降りたいから、教えてください」と頼みました(イタリア語で)。ところが、彼はずっと電話中(いつものイタリア人のように、テンション高く仲良しのお友達と夢中で会話している模様)で、「うん」と答えたものの、わたしのお願いを上の空で聞いているよう。

運転中もずっと電話しているので、こりゃだめだと彼に見切りをつけて、猛スピードで走るバスの中から、ひたすら前方にあらわれる地名が書かれた標識に集中。1時間近く経ったところで、奇跡的に「ヴィラアドリアーナ」という文字を見つけ、「運転手さん、ここですよね?」と聞くと、まだ電話中の彼は「ん?あ、そうだね」と、すんなりバスを下ろしてくれました。

無事、バスは降りたものの、今度はどちらに向かって歩くかが不明。パキスタン人っぽい飲食店のあんちゃんに聞いてみるが、あらぬ方向を指さすので却下。しばらくすると、犬を連れたおばさんが通りがかったので、彼女に確認。この人がすごい人で、的確に道がわかるよう説明してくれました。

言われたとおりに歩いて行って、人が来たら確認すると、「そう、その通りで大丈夫」と。20分くらい歩いたころ、やっと別荘入口が見えてきました。映画「テルマエロマエ」でも取り上げられた有名なハドリアヌスの別荘なのに、観光客がいない。イタリア人でもここまで来るのは大変なのかなあ。

入場したらいきなり坂道。山の上につくった別荘なんですね。しかも眩暈がしそうなくらい敷地広し。最初は古代遺跡っぽい情景は現れませんが、ずんずん進んでいくと、いきなり浴場に出くわします。そこからはあるわあるわ、遺跡だらけ。そのまま奥へ進んでいくと、皇帝の趣味らしい気品に満ちた庭園が現れます。そう、天空の「ラピュタ」や「カリオストロの城」のお庭を彷彿とさせる、なんとも美しい光景です。きれいに整備された池があって、その周囲に大理石のアーチや彫像が立っている。夢のような情景なのに、ん?なんで、こんなところに大きな鰐の彫刻?エジプト趣味があった皇帝がわざわざ作らせたものでしょうか。おおいに違和感はありますが、愛嬌があって笑っちゃいました。

その後、小さいですがクオリティの高い彫刻がみられる博物館へ。黄金の広場、皇帝宮殿、海の劇場、図書館などをまわり、出口付近にある痕跡しか残らないギリシャ劇場を見て終了。別荘というか、僻地の宮殿だったのでしょうね。当時としてはとても充実した施設が備えられていたのだと思います。

ヴィラアドリアーナ

ヴィラアドリアーナ

さて、ここからがまた大変。出口の前にやってくる4Xの市バスに乗って、ヴィラデステに行こうとしたのですが、市バスの切符の購入が事前にできませんでした。遺跡周辺にも店なし。ガイドブックによると、料金が割高になるが現金OKと書いてあったので、鵜呑みにしてバスへ乗車しようとしたところ、切符がなければダメと乗車拒否され、え?わたしたちこのままチボリへ移動できないの?と焦りました。

旅行前に読んだ手記の中に、昼すぎにヴィラアドリアーナの見学を終えてチボリ行きのバスをずっと待っていたが(横にはイタリア人もいたらしい)、結局日暮れまでバスはこなくてバス停近くの安宿に駆け込んだと書かれていたのを思い出しました。私たちもバスは来たけれど乗せてもらえないし、どうしようと思っていたところ、次に来たバスの運転手さんに事情を話すと、「チボリに到着したら、降りたところにタバッキーがあるから、そこで切符を買ったら大丈夫」と言ってもらえ、無事乗車できました。降車したチボリのバス停からは、緩やかな斜面をくだり、斜め右方向へ進むとヴィラデステはすぐです。想像以上に高い場所にあり、その段差を利用した多くの噴水がある素敵な庭園です。枢機卿って本当にお金持ちだったんですね。まさにこの世に天国を実現してしまった感じです。

庭園は、ヴィラアドリアーナに比べるとこじんまりしていて、それほど時間をかけなくてもまわれます。迷子になる心配もありません。水と緑が豊かな庭園でちいさなバラ園もあり、噴水から流れる水音に心が癒されます。時間に余裕があれば、半日くらいゆっくりするのもいいかもしれません。庭園だけでなく、周囲の田園風景も「心地よい田舎」という感じで、贅沢な時間を過ごすことができます。

ヴィラデステ

ヴィラデステ

さきほど市バスを下車した場所にブルマンのバス停があったので、そこからメトロのポンテマンモーロ行きのバスに乗ろうとしたら、3回も「このバスじゃない」と言われ素通りされ・・・。目の前のお肉屋さんに尋ねたら、「坂を下って左側に別のブルマンのバス停がある」と教えてくれて、さほど待たずにバスが到着。帰りもまた、アナウンスのない不便な車中で、行きに見た風景を思い出しながら、降車するポンテマンモーロをさがすが、大きな赤いメトロマークがあらわれたので、心配は無用でした。

やっと、ローマに到着。ここまででも長い1日だったので、これだけ歩くと主人はさすがにバテて、「もう歩けないよ」というのでホテルに置いて、ひとりで夕闇迫るローマの町へ。何か所か見ておきたい教会があったので、時間があるかぎりがんばってまわろうと考えていたのです。イタリアは教会もシェスタの時間があり、12時から15時、もしくは16時頃まで閉まっているところがほとんど。暑い夏場ならともかく11月は日暮れも早いので、シェスタの時間を短くしてくれればいいのに・・・イタリア人はとことんサボルよな、などと考えながら、まずはホテルから近いサンタマリアマッジョーレ教会へ。

テルミニ駅から数分で行けるこの教会は、周囲を圧倒するほど大きくて頼もしい存在です。今回は教会内部だけでなく、特別ツアーに参加してロッジア(13世紀のモザイク)、法王の間、ベルニーニの階段を見せてもらう。ガイドさんが説明するのはイタリア語で、英語は録音テープを聞かされるのみ。若くないラブラブカップルと一緒で、彼らがツーショットの写真撮影に夢中なためなかなか先へ進めなかったのが難点。その後、教会内部に戻り、ここでベルニーニのお墓を探しました。バロック芸術の寵児だった彼にしては、大理石に名前とシンプルな絵が書かれているだけの、あまりの簡素さにびっくりする。このお墓に気づく人は周囲にはなく、ひとり静かに墓前で手を合わせてきました。

教会を出ると、そろそろ日も暮れかけているので、急ぎ気味でモザイク2連発の教会へ向かいまいました。サンタプラッセーデ教会は9世紀創建の古い建物がそのまま残っていて、なんともいえない良い雰囲気。同時期につくられたモザイクが目的だったが、暗すぎて何も見えない(ライトなし)。すごく残念でしたが、しかたなく次のサンタプデンツィアーナ教会へ行ったのですが、ここは扉が閉まっていたのです。

気を取り直して、昨日閉鎖されていたサンタンドレアアルクイリナーレ教会へ。ベルニーニが設計した教会で、狭い敷地という厳しい条件下で彼が思い立ったのは楕円形の平面。内部は不思議な空間で、からだが浮きそうな錯覚すら覚えます。装飾もバロックらしく華やかで美しい。ベルニーニ自身が代表作だと語るだけに、すばらしい教会です。誰もいませんでしたが、ここは見逃せません。

続いてベルニーニの制作した天使がいるサンタンドレアデッレフラッテ教会へ。スペイン広場の近くにあります。ミサがはじまったばかりでしたが、ここはどうしても見たい教会の一つだったので、礼拝の邪魔をしないよう忍び足で目的の天使の前へ。屋外に飾られる予定だった天使二体ですが、教皇があまりの美しさにレプリカを作らせて、それを屋外展示させたという逸話の残る彫刻です。外観は地味な教会ですが、天国へ導いてくれそうな美しい天使に会うため再訪してみたい場所です。

なんとか一目内部を見たいと思っているポポロ広場のサンタマリアデルポポロ教会へ再度参りましたが、やはり開いていませんでした。もう一度ローマへいらっしゃい、ということなんでしょうね。これだけ歩くとさすがに疲れて、ここからはメトロでテルミニ駅へ戻りました。

8日目 ボルゲーゼ美術館→ヴィッラジュリアエトルスコ→ポポロ広場→アウグストゥス廟→ナヴォーナ広場→パンテオン→サンタマリアソプラミネルヴァ教会

とうとうイタリア最終日。ボルゲーゼ美術館まではメトロの路線はないので、徒歩で向かいました。途中、明るい陽のもとで、再度サンタマリアデッリアンジェリ教会を見ました。ミケランジェロが設計したというこの教会は、彼が古代ローマ時代へ畏敬の念をこめて、オリジナルを尊重して浴場遺跡にできる限り手を加えなかったものだという。後の世に大改造されますが、駅前の朝のあわただしい雰囲気から、突然別世界にまぎれこんだような静謐でおおらかな内部空間が印象的でした。

ボルゲーゼ美術館「プロセルピーナの略奪」

ボルゲーゼ美術館「プロセルピーナの略奪」

少し歩くとサンタマリアデッラヴィットーリ教会が現れました。帰国前にもう一度「聖女テレーザの法悦」を明るい光のもとで見ることに。やはり引き込まれるような魅力を感じます。朝早くから熱心な観光客が数組訪れていました。少し寄り道しすぎたので、急ぎ足でボルゲーゼ公園へ。緑が豊かでゆったりした公園内には、ジョギングする人、たくさんの犬を連れて散歩する人など、みな思い思いに過ごしています。ボルゲーゼ美術館は入口がわかりにくく、結局一周してしまいました。地下へ降りるのですね。

ここもヴァチカン美術館並みのものすごい人で、広くない館内は押すな押すなの状態。しかも団体さんが多く、ガイドが長々と作品前で説明をするためなかなか前へ進まず、ラッシュ時の電車内のような状態に。しかも、2階(絵画展示)はほとんど閉鎖状態、1階でも見学者の多い部屋(メインの作品がある)の真ん中を突然仕切って、館員らしき人による絵画の写真撮影がはじまったため、行き場を失った人でさらにあふれかえることに。時間を細かく区切った予約必須の意味がわかりません。

日本であれば休館日にこういう作業をするのでしょうが、そこはイタリア。スタッフにしてみれば休日出勤なんてまっぴらごめんなんでしょうね。それで見学者が混乱する事態が起こるのだと思います。ベルニーニの作品が何点かあるので、とても楽しみにしていた美術館でしたが、ゆっくり鑑賞なんて贅沢なことは叶いませんでした。それでも「プルートとプロセルピーナ」「アポロとダフネ」など、息をのむほど美しい作品を間近で眺められたことは幸いでした。硬い大理石を使っているのに、人間の皮膚の柔らかさまで表現してしまうなんて、ベルニーニの人並外れた才能ならではだと思いました。

まだ午前中なのにどっと疲れてしまい、お茶でもと館内カフェに向かいましたが休業中。しかたなく、そのまま少し離れたところにあるエトルリア文化の宝庫、ヴィッラジュリアエトルスコ博物館へ。途中、門に愛嬌のある象さんの飾りがついている施設を見つけ、カフェかと期待したのですが、動物園でした。時間に余裕があれば、外国の動物園も楽しそうですね。どんな動物がいるのでしょう。外から見えたのは「養蜂施設」。はちみつづくりの観察をしているようです。

歩いても歩いても、なかなか到着できない美術館。ボルゲーゼ公園の端っこにある施設なので、がんばって歩くしかありません。大きな国立近代美術館を通り過ぎ、ようやく到着しました。もともとは法王が息抜きするためのお屋敷です。外からはわかりませんが、建物で囲まれた中に庭園が、そしてその周囲には屋根付きの柱廊があり、閉ざされた空間で雨の日でもここでおしゃべりを楽しむことができたのでしょう。庭園には異国風の寺院もあり、隠れ家にはぴったりの美しいつくりでした。

中心地から離れているためか、来館者はほとんどいませんでした。でも、おどろくほど充実した収集品が展示されています。日本ではエトルリア文化はあまり知られていませんが、最初はならずもの集団に近かったローマ人たちに高い文化や技術をもたらしたのは、じつは先住のエトルリア人です。色彩豊かなテラコッタなど建物の装飾品やデザイン性の高い生活用品、かわいい絵が描かれたお墓など、人々が楽しそうに踊っている装飾も結構あり豊かな暮らしを送っていたことがうかがえます。

今回、ここで見たかったのは世界史の教科書に載っていた「夫婦の寝棺」。ほとんど等身大の大きさの仲睦まじい夫婦の像がお棺の上に飾られていて、生前も死後もずっと一緒という理想的な姿があらわされています。お棺なのに2人ともとっても幸せそうです。エトルリアはギリシャとはちがって女性の地位が高かった(当時としては画期的)ことも、こういう表現につながっているのかもしれません。

エトルリア(夫婦の陶棺)

エトルリア(夫婦の陶棺)

美術館を見学した後は、ボルゲーゼ公園経由でポポロ広場へ抜けました。サンタマリアデルポポロ教会はシェスタのためか、やはり閉鎖されていました。ポポロ広場のオベリスク下の階段に腰掛て、持参した簡単なランチをすませることに。このオベリスクを目指して、昔の旅人はローマへやってきたそうです。電車も飛行機もない時代、ローマに無事到着したときは泣きそうなくらい嬉しかったでしょうね。

飛行機の時間まであまり余裕はなかったのですが、最後の時間を利用してアウグストゥス廟(修復中なのか周囲に塀があり目隠しされていました)、ナヴォーナ広場(ここも修復中で4つの大河やムーア人の噴水はよく見えず)を経てパンテオンへ。古代ローマ時代のコンクリート製建造物で、しかも雨が少ないせいか天井の真ん中に大きな穴があけてあります。日本では考えられない建築です。ここにあるラファエロのお墓にお参りして、足早にお隣のサンタマリアソプラミネルヴァ教会へ。

天井に穴があいている「パンテオン」

天井に穴があいている「パンテオン」

フィリピーノリッピ、ゴッツォリ、ミケランジェロなどまるで美術館のような芸術品がそこかしこにある教会です。青い天空のような美しい天井にも心が洗われる思いがしました。もう残り時間があまりなく、大急ぎで徒歩で荷物を取りにホテルへ。前にも書いた通り、乗車予定の電車がキャンセルになっていることを駅で知り、その後の電車で空港へ向かいました(発車直前まで何番ホームか表示されず、大きなスーツケースをもった乗客が右往左往していました)。

ドーハ→羽田間の飛行機は、30分ほど遅れて到着したため、最終電車に間に合わず、空港からはじめてタクシーで帰宅しました。帰ったら午前1時30分。あっという間の9日間でしたが、あちこちでよろめき頭をぶつけながらも無事に帰国できたことにほっとしました。

※ここに書いてある交通、施設情報はあくまでわたしがイタリアに滞在した時点のものです。イタリアは結構頻繁に料金やシステムが変更となりますので、訪問前にできるだけ最新情報を入手するのがおすすめです。

平井さん、お世話になりました。

実は予定していたツアー(ローマのみ8日間)が、出発1ヵ月前に催行中止となってしまいました。以前利用したことのある旅行社に相談したものの、航空券完売と断られ途方にくれていたところ、御社の平井さんが手際よくエミレーツ便を押えてくださいました。迅速で的確な手配をしていただき、とても信頼できる方です。おかげさまで無事イタリア旅行を楽しむことができました。本当にありがとうございました。また、個人旅行に行くときには、お世話になりたいと思っています。

こちらの記事もオススメ

TOP